夜明けのコーヒーには 早すぎる
 オウム返しに聞き返したヒロコに、タルボンヌミコトは大仰に飾り付けられた写真入れを開いてみせた。
 促されるままに、ヒロコは写真を見やる。
 開かれた写真入れの中央には大きめの写真が入っており、その写真に一人の男性がスーツ姿で映っている。
 うーん。ヒロコは首を軽く傾げた。
 良くいえばいい人、悪くいえばパッとしない印象を受ける。
 歳は三十ぐらいだろうか?顔の特徴は特にないのだが、敢えていうならば眼が細く短かめの頭髪が素朴な雰囲気を出していた。
 「どう?いい人でしょ?」
 ミコト先生は破顔して言った。只でさえ細い眼が、奥に埋もれていく。
 「は、はい」
 ヒロコは戸惑いながらも頷いた。いい人はいい人なのだろうし、頷くしかない。
 「良かったー」ミコト先生は、手を叩いてルンルン気分。今にも職員室から飛び出して、スキップで何処かへ旅立ちそうな勢いだ。「この人、スイセイさんっていうんだけど、真面目で優しく、生徒の受けもいいらしいのよ」
 「生徒?同業者の方ですか」
 「そう。○高よ」
 ミコト先生の言った学校名を聞いて、ヒロコは得心する。
 ヒロコの勤めている学校の姉妹高だ。同じく女子高だと聞いている。
 「成る程。今回の見合いはその関係で?」
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