夜明けのコーヒーには 早すぎる
肴(さかな)その五 ユリの新たな悩み
 その日は、いい天気だった。
 晴れ渡る空、白い雲、ぼくを暖かく照らす太陽。
 正に本屋日和といえる。
 ぼくは意気揚々と家を飛び出した。
 街中をぶらぶらしながら、目的の本屋に向かって歩く。
 本屋に着くと、先ずは新刊をチェックした。
 ぼくは作家買いをする派だから、好きな作家を探す。
 残念なことに、今日は読みたい新刊が見つからなかった。
 でも、そんなことは本好きには苦にもならない。
 何故ならば、周りは全て本だからだ!
 この説明で首を傾げる人には理解し難いだろうが、本好きが過ぎると本を眺めて一日が過ごせるようになる。
 読むのではなくて見る。
 これが出来て、一端の本好きといえるだろう。
 ぼくは本を見つめながら、店内をゆっくりと歩く。
 もう既に持っている本を手に取り、裏の紹介を読む。
 ずれている文庫を、そっと直す。
 昔読んでた、懐かしい漫画を眺めたりする。
 ゲームの攻略本を持ち上げ、その重さを確認する。何故か攻略本は、重いものが多い。
 辞書を手に取り、ぱらぱらと捲る。
 読んでみたい本を手に取り、悩む。
 この悩んでいる時間も楽しい。
 そうこうしている内に、二時間ほど経った。
 ぼくは読みたくなった本を、レジに持って行く。
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