放課後ラプソディー
それより、急がなくちゃ!

あたしはベースアンプを転がして、新入生歓迎コンサートの行われる中庭へ。

吹奏楽部は一番最初。

あわててベースアンプを繋げて、肩からベースをかけた。

「桃、間に合ってよかった!」

チューバの瑞穂先輩がほっとしたように言う。

「すみません!」

謝る暇もなく、ドラムの合図が鳴って演奏が始まった。

さあ、楽しい音楽の時間の始まりだ!

みんなの音が一つになるこの瞬間が、わたしは大好き。

一つ一つのパート毎に楽譜は全然違うのに、それが組み合わさることによってひとつの音楽をみんなで作っていく。

メロディーを奏でるトランペットも、対旋律を奏でるホルンやユーホニウムも、そしてみんなを支えるベースラインもキラキラした飾りをするフルートやクラリにネット。

だけど演奏できるのは一曲だけ。

あっという間に楽しい時間は終わって、次の部活のために大急ぎで打楽器を撤収する。

「もーも、良かったよ!ベース、カッコイイじゃん。」

背が低いからから、よく頭を撫でられることの多い私だけど、この手だけは触れられるだけだけどすぐに誰だがわかっちゃう。

この大きくて、あったかい手は…

「こうちゃん!」

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