ここに在らず。



今、音が…聞こえた…?


その瞬間、私の視界を占める闇が和らいだ。すると目の前にはぼんやりと何かが現れる。ぼんやりと…それは、人の姿。


「それは孤独と言うんだ」


そして聞こえてきた、呟くように告げられた言葉。心地の良い男性特有の低めの音。それは目の前のぼんやりとしたその人の声。


こ、どく…?


言葉を理解した瞬間、私の暗闇の中にハッキリと人の姿が浮かび上がった。それは先程同様にフードを被ってベンチに座る彼の姿。

私の瞳は真っ先に彼を捕らえ、そして彼から目が離せ無くなった。ここに、目の前に、私だけの一人の世界に人が居る。こんな事……初めてだ。


不思議だった。暗闇の中に現れた彼。
暗闇の中でも見える彼。それなのにどうしてだろう。私は彼に、まるで暗闇を纏っているかのようだと感じた。存在を主張している訳でも無い。強いて言うならやけに溶け込んでいるような気もする。

それでも彼はここに居る。彼だけが居る。

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