ここに在らず。
瞬きも忘れてただひたすら見つめるその先で、彼はゆったりとした動きで立ち上がった。そしてそのままこちらへと歩みを進める。
「君は孤独の中に居る」
だんだんと縮まる距離。彼は歩みを止めない。
それは手を伸ばせば届く距離。人と人とが会話をする距離。コミュニケーションを取るための距離。
その距離に、彼は立つ。
「…可哀想に」
その言葉と共にそっと手が私へと伸ばされる。唖然とする私にはその行動の意図が読めなかったけれど、その直後に心地よい重みを頭に感じてようやく理解した。
頭を、撫でられた…?
すると、ふわりとした感覚に私の中の懐かしい記憶が蘇る。
そうだ、昔。まだお母さんと呼んでいた頃。あの頃、言いつけが守れる度に母は私の頭を撫でてくれていた。だからまた頑張ろうって、そう思って……