ここに在らず。
「……」
返事をしない私。この母の言葉に返事をしても意味が無い。私がどこで何をしていようがこの人達には関係なくて、問題は約束を破ったか破らないか。それは、学校以外の場所に行っている事はもうバレているのだと私に告げるための言葉だったからだ。
するとそんな私に、母は作られた笑顔をピクリとも動かさず、言葉を重ねた。
「もしかして、お友達と遊びに行ってるのかな?そうだよね。もう高校生だもんね」
…母は、残酷な言葉を悪気も無く使う。
分かって使っているのだろうか。私に友達がいる訳が無い。母との幸せのためにずっと私が約束を守って来た事を知っているはずだ。だとしたら、今ここでその言葉を告げる意味は?
「でもね、サエちゃん。お約束は覚えてるよね?出来ないとここから追い出されちゃうかもしれないよ」
そして、「そうなったら私、とっても寂しいなぁ」なんて、彼女はわざとらしく眉尻の下がった悲しそうな表情を作ってみせた。