ここに在らず。


そっと私はベッドを出る。

きっと居る。いつも昼間に行っていたから、だからダメだったんだ。あの日は夜だったから、夜ならきっと、きっとまたあそこにーー、


導かれるように玄関へと向かった私。しかし、ドアノブに手を伸ばした瞬間、頭の中で声がする。


『ここから追い出されちゃうかもしれないよーー』


それは昼間の母の声。

これだけ忠告されたのにまた約束を破ってしまったら、一体私はどうなるのだろう。それで本当にもし追い出されたりしたら、私はどうすればいいのだろう。


不安がこみあげてきた。ドアを開けて外へ飛び出す勇気が出ない。

怖かった。孤独ってなんだろう。もし追い出されたら一人で生きていかなければならない。今だって一人だと思ったけれど、それとこれとはまた違う。

もしかしてそれが本当の孤独なのではと思った。守られているだけ今はマシだと。でも…だとしたらこれはいつまで続くの?

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