ここに在らず。
「…お気持ち、お察しします」
ポツリと呟かれた言葉は運転席から聞こえてきた。いつもは何も言わないのに。それ程私が怯えていたのか、それとも…。しかし、だからといって逃れられる訳ではない。
車から降ろされた私はいつもの祖母の部屋へと通される。そこで私は意を決した。何でも耐える。耐えるしか無いと思った。…きっと運転席の人はこれを知っていたのだろう。
待ち構えていた祖母の表情はーーいつにも増して怒りに満ちて歪んでいた。
「ーーお前はっ!自分の立場がっ!分かってるのかっ‼︎ 」
振り下ろされる杖と共に、金切り声が部屋中に響き渡る。
「お前なんてっ!お前が居なければっ!お前さえ居なければっ!」
叫ばれる言葉はいつも同じ。いつも私の存在を否定する言葉。
「よくもぬけぬけと!お前が私を不幸にするんだっ‼︎ 」
…だったら、生まれる前に殺してくれれば良かったのに。