ここに在らず。


今向かっている先ーー私達の行き先は、以前ナツキさんに連れられて来た場所、二人の職場である。トウマさんと話をしたあの日から、私は学校が終わると同時に迎えに来てくれるトウマさんの車に乗って、例の職場へと向かうようになった。そしてトウマさんのお仕事を手伝って一緒に帰宅する、これが毎日の日課になっている。

向こうに着いたらそのままトウマさんの仕事室に籠り、デザインの手伝いやらサンプルの試着やらをして、時にはまた撮影なんかもしていた。今はやっと仕事内容が分かってきた所で、まだ雑誌に載る自分の姿には慣れないにしても、私としては任される事にとてもやりがいを感じていた。日々、トウマさんにも言われた通り、私はやる気に満ちているのだ。

そして職場という事は、やっぱり二人以外にも働く従業員の方々が居る訳で。始めは私も向こうの従業員の方もお互い戸惑っていたのだけれど、だんだんと顔も知れて、皆さんからはトウマさんの知り合いのモデルの子、という認識をされるようになったらしく、今では軽く挨拶をしてもらえる様になった。場違いな私がこんなにもすんなり受け入れられた事に驚いたのだけれど、恐らくこれも全てナツキさんのおかげだろう私は思う。


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