ROMANTICA~ロマンチカ~
プロローグ
何度も、くり返して見る夢がある。


夏の夕暮れ時。一頭の犬が歯を剥いて唸っている。


大きな犬だ。


ジャーマン・シェパード?

ううん。

ジャーマン・シェパードとドーベルマンのかけ合わせかもしれない。



とにかく大きくて、黒くて、獰猛。


犬というよりも、狼に近い生物だ。


夢の中のあたしは、多分、四歳か五歳くらい。


一人ぼっち。


パパやママみたいなあたしを守ってくれる人は、そこにはいない。

だからあたしはなすすべもなく脅え、えぐえぐ泣きながら震えてる。

白樺(しらかば)の森の中。木に背中をすりつけ、いよいよ追い詰められる。

絶体絶命。
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