ROMANTICA~ロマンチカ~
その時、一人の美しい少年がどこからともなく現れる。


十歳くらいだろうか。


戦うための武器なんて持ってない。


それなのに、あたしを背後にかばい、猛獣に冷たい一瞥(いちべつ)をくれる。


すると、今の今まで敵意剥き出しでエキサイトしていた猛獣が急に戦意を失うの。

シッポを巻いて逃げ出す。


彼はあたしの手を取って言う。


「もう大丈夫だ。帰ろう」


夢の中のことだから、見える風景はボンヤリしてる。


彼の顔は良くわからない。


ただ、栗色がかったサラサラの髪の毛と、しなやかな身体つきをしているのはわかる。


いつも顔がはっきり見えない。

だけど、あたしはいつだって、彼が美しいことを知っている。


困ったことがある時、風邪で熱を出して寝ている時……


そういう時には決まってこの夢を見る。


不思議なことに……

この夢を見た後には、熱が下がり、色々な問題が一挙に解決する。

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