ROMANTICA~ロマンチカ~
何年前のことだっただろう。
 


母親が経営する会社の慰安(いあん)旅行に付いて来た都季。

あれは、河原でバーベキューをした時のことだと思う。
 



『俊夫さん、食べてる? 遠慮してたらダメだよ、すぐなくなっちゃうからね』
 


大きな目に利発そうな光を宿らせ、焼きそばを取り分けてくれた。
 


あの時は、あんな魂の抜けたような表情はしていなかった。
 


俊夫は熱いものが身体の芯でたぎり出すのを感じた。
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