ROMANTICA~ロマンチカ~
そうよ、相手は何だかんだ言いながら、モテモテなのよ。


しかも駆け引きにも長けているビジネスマンだ。




彼氏いない歴十九年のあたしをその気にさせてしまうくらい、赤子の手をひねるくらい簡単なんだよ。

しかも、最初に会った時に「嫌い」って言ったことを根に持ってるし。



だけど、本気で赤ちゃんの手を捻るようなヤツがいたとしたら、そいつは人でなしだ。
 



――きっと、スケコマシなんだわ、女ったらしなんだわ!
 


そう思いながらも、あたしの身体には、さっきの陶酔の余韻が残っていた。

どうしようもなく、氷室涼輔のことが好きだと、理性を超えた本能の部分が言っていた。


 
あたしより賢い子だったら、そこで素直に好きだと言っただろう。



あたしよりバカな子だったら、顔を赤らめて硬直し、その場の空気を凍らせたことだろう。



だが、あたしはあたしでしかなかった。
 



「結構です! あたし、パーティに戻りますから!」
 


立ちあがり、氷室涼輔の足をしたたかに蹴飛ばし、憤然とあたしはその場を後にした。
 


ああ、まったく、腹が立つ! 


あたし、千住都季は、簡単に扱える人間ではないのだ! 


それなのに、懐柔され、あまつさえ唇まで許してしまった……。


しかも、続きを望んでいた……。
 


ああ、何て情けない! 
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