ROMANTICA~ロマンチカ~
そして葬儀の席にいきなり現れた弁護士。

彼はあたしの「婚約者」の代理人を名乗り、こう告げた。
 

「故千住雅紀氏が経営していたところの『千住ドットコム』に関する一切の事柄は、雅紀氏の法定相続人である娘の千住都季さんの婚約者、氷室涼輔(ひむろ・りょうすけ)氏の管理下に移動致します」
 

良くわからないが、ママが経営していた会社は、あたしの「婚約者」のものになったらしい。

 
「きっ、聞いてないわよ、婚約者なんてッ! 

ええいッ、話してわからないんだったらコブシで話つけようじゃないのッ、オモテ出ろッ!」

 
普段のあたしだったら、このくらいのことは言っただろう。


けれど、その時あたしは情けないことに、物の見事にフヌケになっていたから、

 
「ああ、そう……」

 
って感じで、弁護士に連れられるままに「婚約者」の「お屋敷」に連れて行かれたのだった。

 
そしてあたしはお屋敷……

メイドさんやコックさんや執事さんまでいて、家の門から玄関まで数百メートルもある、ホテルか何かと見まごうような、ハリウッド映画に出てくるような大邸宅……


で一ヶ月の間、フヌケとして毎日ボヤーンと暮らしてきたのだった。
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