ROMANTICA~ロマンチカ~
「それがね……」
 
木村さんが目を伏せた。長いマツゲだ。
 
「彼氏がさぁ、ハワイに行こうって言うのよ。しかもそのコンサートの日が出発日。

ヴァイオリンなんかより、ビーチで日焼けでもした方が楽しいって。

ったく、ゲイジュツのわからない男って嫌よね?」
 
「は、はぁ……」
 

木村さんって、やっぱり彼氏いるんだ。そりゃ、こんな綺麗な人、男が放っておかないわよね。
妙に納得してしまった。
 

「でさ、良かったら、代わりに行ってくれないかな、と思って。

どうせなら、音楽好きな人に行ってもらった方がいいし。誰か誘って行って来てくれない? 

もし、当日都合悪くなったりしたら、それはそれで構わないし。チケット、もらってくれるだけでいいからさ?」
 
「行きたいな」
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