ROMANTICA~ロマンチカ~
先日、不倫妻の依頼による、浮気相手の浮気調査の仕事があったおかげで、事務所の台所は潤った。


……が、調査報告の際に依頼人が演じてみせた愁嘆場(しゅうたんば)を思い出すと、思わず顔をしかめたくなる。

 
大体、ホストの女関係を調べて欲しいなんて、依頼する方が間違っている。

多くの女に尽くすのがホストの仕事なのに、自分だけのものだと思いたがる女の方に問題アリだ。

依頼人は愁嘆場を演じたものの、規定料金以上の謝礼を弾んでくれた。
 

事実とは、時として痛みを伴うものだ。



たとえサドルのない自転車に飛び乗った時ほどのものではなくても、確かに痛い。



――というのは、「裸の銃を持つ男パート33と1/3」の受け売りだ。

だが人には、時として痛みが必要だ。

過去を振り切り、前を向いて歩いて行くために。

多めに払ってくれたチップは、それを意味しているのかもしれない。
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