ROMANTICA~ロマンチカ~
「見つかったって?」と母方のおばあちゃん。

心配して一緒にホテルに泊まってくれている。
 
何らかのアクシデントがあって、パパとおじいちゃんおばあちゃんが、墜落した飛行機に乗っていなかったことを、あたしたちはみんな、心のどこかでは強く望んでいた。
 
おばあちゃんの問いに、ママは無言でうなずくと、
 
「都季は、おばあちゃんと待ってなさい」
 
ハンド・バッグを手に立ち上がり、ソファの足に引っかかって転んだ。
 
「雅紀! あなた、大丈夫?!」
 
「……」 
 
何も言わないママの顔は、真っ青だった。

ママの股の辺りから血が流れ、絨毯を染めて行く。
 

「おばあちゃん! ママが! ママが!」
 

あたしは泣き叫んでいたが、「ママが死んじゃう」とは、絶対に言わなかった。

言えなかった。そんなことには、耐えられなかった。
 
その日、パパとおじいちゃんとおばあちゃんと、あたしの弟が死んでしまった。

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