ROMANTICA~ロマンチカ~
言えなかった。そんなことには、耐えられなかった。
 
その日、パパとおじいちゃんとおばあちゃんと、あたしの弟が死んでしまった。

だけど、ママは生き残ってくれた。

 
お葬式、ママはまだ身体が万全ではないのに、立派に喪主を務めた。

ママの顔が涙で濡れている。
 
「トキちゃんがいるから、ママは泣かなくていいんだよ」
 

なぐさめてあげたら、ママは余計に泣き出した。
 
 
――悲しい夢。こんな悲しい夢、見たくない。夢なら、早く醒めて欲しい。

 
あの後すぐ、ママがパパの会社を継いで忙しくなったから、おばあちゃん(ママのママ)と一緒に暮らし始めた。
 

「畜生! どうして死んじまうんだよ! バカ野郎!」
 
仏壇の、パパの位牌を怒鳴りつけるママ。

泣きながら、怒っていて、見ていてすごく辛かった。
 
「雅紀、もう無理しなくていいよ。会社は他の人に売ってさ、アパートでも建てれば、家賃収入で不自由なく暮らして行けるじゃない」
 
おばあちゃんが勧めても、ママは頑として首を縦には振らない。
 
「そんなことしたら、忠信の生きた軌跡がなくなってしまう」
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