ROMANTICA~ロマンチカ~
拳を握り締めるものだから、また傷から血が滲んでいる。
 
「涼輔さん……」
 

――なんて顔をするんだろう……。そんな悲しそうな顔、しないで……。
 

もう、恥ずかしくなんかなかった。
 

怪我した手にそっと触れる。
 

「もう、いいですよ。そんなこと。

あの時、嫌いとか、冷血漢とか、酷いことばっかり言って、ごめんなさい。

ね、これでおあいこ」
 
「都季……。ずっと、そばにいろよ、な」
 
「はい」
 
病院に着くまで、ずっとあたしは涼輔さんをこの腕に抱いていた。
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