ROMANTICA~ロマンチカ~

8.都季

「私は、君を利用しようとした。

あの時、結婚には興味がなかった。

ただ、年々増えつづける縁談話を断りつづけるのにも嫌気が差していた。

そこへ降って湧いたかのように婚約話だ。しかも、相手には身寄りがなく、何の後ろ盾もないという。

邪魔にならないだろうと思った。放っておいて、自分は好きなようにすればいい。

原島は何度も電話をかけてきたが、聞く耳を持たず、相手の名前すら確かめようとしなかった。

君が一番傷ついて、誰かを必要としていた時に、自分のことしか考えていなかった。

家に帰って来てからも、君にとった態度は酷いものだった。

以前に会っていることを君は忘れていたが、あの時、君が家を飛び出そうとした時まで、私も忘れていた。

悪かった。

許してくれとは言えない。

今は、そんな自分が悔やんでも悔やみ切れない」
 

そう言った涼輔さんは、歯を食いしばっていた。
< 261 / 369 >

この作品をシェア

pagetop