ROMANTICA~ロマンチカ~
「涼輔様も人がお悪い。お声をかけて下されば良いのに。

それにご婦人のお部屋ですぞ。ノックくらいなさらないと……」
 


「さっきしたよ。おまえを呼ばなかったのは、別に用事がなかったからだ」
 


涼輔の目がアルバムに止まった。
 

こめかみが動いた。白い頬がかすかに赤らむ。
 


「原島」
 
「それでは、わたくしはこれで……」

 
猛スピードでアルバムを閉じ、「失礼致します」といって、来た時と同様、疾風怒濤の勢いで原島さんは去って行った。

 
あたしは立ち上がり、彼を部屋に迎え入れた。

 
「あのおしゃべりジジイが……」
 

原島さんが去って行った方向を横目ににらみながら毒づく。
< 93 / 369 >

この作品をシェア

pagetop