My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
「ヴェントスの国王に、書簡を送りたい」
「――」
「頼む」
何も言わずに、俺の顔をじっと見つめるホリス
瞬き1つせずに、ただただ俺を見つめている
美しい顔に、夕闇の藍が挿す
すると
「使者を出そう」
「――」
「明朝だ」
最後にそう言い残して、踵を返し歩き出した
美しい白の衣が、薄暗くなる世界に舞う
「――グレイス。手配を」
「承知いたしました」
そして、姿を消した