My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
「――気?」
近寄ってきた俺に微笑みながら、ゆっくりと俺の手を取るグレイス
そして、寄り添っていた木に添えた
「何?」
「心を穏やかにして」
「――?」
「感じるはずです。この木の『命』を。」
そう言って、俺の手の上にそっと自分の手を重ねて瞳を閉じたグレイス
その姿を横目に、同じ様に目を閉じてみる
真っ暗になる視界
聞こえるのは葉の擦れる音だけ
そんな中、神経を集中させて心を穏やかにする
一瞬の静寂
すると
――コポッ
突然心の中で水の弾ける音がした
驚いて瞳を開けると、俺を見て微笑むグレイスがいた