My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ



「――気?」



近寄ってきた俺に微笑みながら、ゆっくりと俺の手を取るグレイス

そして、寄り添っていた木に添えた




「何?」

「心を穏やかにして」

「――?」

「感じるはずです。この木の『命』を。」




そう言って、俺の手の上にそっと自分の手を重ねて瞳を閉じたグレイス

その姿を横目に、同じ様に目を閉じてみる



真っ暗になる視界

聞こえるのは葉の擦れる音だけ

そんな中、神経を集中させて心を穏やかにする



一瞬の静寂

すると




――コポッ




突然心の中で水の弾ける音がした

驚いて瞳を開けると、俺を見て微笑むグレイスがいた


< 109 / 304 >

この作品をシェア

pagetop