My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ
「姫様に、もう一度笑って頂きたい」
最後にそう言って、強く瞳を閉じたグレイス
ポタポタと、溜まっていた涙が頬を伝う
その姿を横目に、再び目の前に広がる緑に目を移した
溢れんばかりに世界を覆う、緑
止まることなく流れ続ける、水
惜しみもなく降りそそぐ、光
この美しい景色が、一度死んだ?
赤に染まって
地獄の様な景色に――?
いつか見た、滅びていった国々を思い出す
目を覆いたくなる様な
まるで地獄の様な――その光景を
思わず俺は、強く瞳を閉じた