My Precious ~愛する人よ~ Ⅰ


しばらくして、そっと閉じていた目を開けて再び目の前の景色を瞳に映す



そこに広がるのは、変わらず美しい

アネモスの国




「信じられない」

「――何がです?」

「この景色が血に染まった事」




俺の声を聞いて、ゆっくりと瞳を開けたグレイス

そして、ふっと笑った




「――元のアネモスの美しさを取り戻せば、姫様もきっと笑ってくださる」

「え?」




唐突に言われた、その言葉を聞き返す

すると、もう一度柔らかく微笑んだグレイス




「そう信じて、私達は木を植え、水を戻し、元のアネモスの国を作り上げました」

「1年で、ここまで...」

「すべては、姫様の為に――」




そう囁いたグレイスの目に涙はなかった



ただ、真っ直ぐに前を向いて

沈みゆく夕日を目に映していた




その心の中に、一輪の花を添えて――

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