フェアリーカンタービレ

闘技場にて



全員が起きて、顔を合わせたのは次の日の朝だった。


全員は宿のホールに集まった。


アニア以外はガーゼをほっぺに貼り付けている。


他人から見れば何の集団だ、と思われるだろう。


アニアが口を開く。


「馬車がボロボロだから買いたいわ。有り金はいくらあるの?」


「俺は一文無し。」


ミカドが当たり前のように言う。


「私とマローニはもちろん一文無しよ。」

シンシアも続く。


「実は、俺も急いでいたから、金は....。」


ラミアスはすまなそうに言った。


そしてアニアを除く全員がイルを見る。


「俺は2万トロピカル....でしょうか。」


イルは目をそらして言った。


シンシアとミカドの目が光った。


アニアはため息をついた。


「はあ....。そんなお金で馬車が買えるわけないでしょう。100万トロピカルはないと。」


全員が驚く。

「そんなお金あるわけないじゃない!!」


シンシアは叫んだ。


「....じゃあ、今日は皆働いて。充分な資金を集めて頂戴。」


アニアは真顔になり言った。


もともと真顔だが。


全員はアニアに驚きの目を向けている。


アニアはそんな皆の反応が嫌になり、先に宿を出た。


ラミアスはそんなアニアを追うようにして、外へ出た。


アニアはとにかく歩いて目的の場所まで行った。


そして、目の前の建物を見据えた。


いかにも神々しく建つ建物は闘技場。


戦うための場所だ。

お金も稼げる。


「ほう....。アニアはこの店で働くのですね。」


イルがいきなり後ろから声をかけてきた。


アニアはビクッとしたが、おくびにも出さずに訂正した。


「働くのでなく、客として入るのよ。....ところで私をつけてきたの?」


「いいえ。俺もこの闘技場で稼ごうと思いまして。ところで、そんな細い体のあなたが闘技場できちんと稼げるのですか?」

イルはニコリとして言った。

アニアはカチンと来て言い返した。

「もちろんよ。決勝で当たったら、すんなりあなたが負けると思うわ。」

「へえ、それは楽しみですね。」

イルは話しながら、歩き始める。


「ええ。楽しみにしていて頂戴。」


アニアも歩き始めた。


< 62 / 74 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop