花嫁指南学校

「ええ。志穂美さんの言われることが実際に起こったんですけど、新しい男の人だってお金持ちでしょう。敏腕の弁護士を雇って、問題を上手く片付けてしまったそうなんです」

「なるほどね。」

「元婚約者側も醜聞が広まるのを恐れて訴訟から手を引いたそうです。歯医者が消えてくれて、二人は晴れて正式な夫婦になれたというわけです。もちろん母校からは破門扱いですよ。同窓会名簿から彼女の名前は削除されましたし、学園内への入校も禁止されました。もっとも、そんな制裁は彼女にとっては痛くも痒くもないでしょうね。もはや開業医の御曹司を捕まえてしまったんですから」

「学校側は対応に追われたでしょうね。あの女帝先生が直々に婚約者のおうちに訪問して、それこそ土下座でもする勢いで謝ったんでしょうね」

 強面で知られる佐島学長が婚約者の一家に何度も頭を下げる様子を想像すると、哀れみの気持ちでいっぱいになる。

「周り中に迷惑をかけておきながら上手に逃げおおせたんです。あの子は大したタマなんですよ」

「よく知ってる同級生なのね」

「はい。彼女はああいう性格の子でしたから苦手でした。白椿寮で彼女と同室だった子とは仲が良かったんですけど。彼女のルームメイトって、例のすごい玉の輿に乗った女の子です。乗り換えちゃった子のことは、むしろ志穂美さんの方がよく知っているんじゃないでしょうか」

「え、私が? あの学校の卒業生でお友だちっていったらあなたしかいないわよ。え、でも、もしかして!」

 志穂美は苦い記憶の糸をたぐり寄せる。去年、彼女は歯科医師の奥村優二にひどいふられ方をした。彼とは二年間も交際していたのに、ある日突然カメリア女学園の女子大生に横取りされたのだ。同校はエグゼクティブの花嫁候補を育成する特殊な学校法人で、在籍している女子学生は粒ぞろいの美少女ばかりである。しかも、花嫁候補たちは皆正真正銘のまっさらなヴァージンだという徹底ぶり。

 同校主催のお見合いパーティーでその女子大生と知り合った優二は、あっという間に志穂美から彼女に乗りかえ、婚約までしてしまった。志穂美は恋人を取り返そうとがんばってみたが、彼はすっかり若い娘に篭絡されていた。
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