花嫁指南学校
崖っぷちの娘

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 世間の人々に「花嫁学校」と呼ばれる(揶揄される)私立カメリア女学園では、男の人に愛される女子を育てている。一人の男に愛される女というよりは一般的な男に受けが良い女、すなわちもてる女である。異性に好かれる女は同性にも好かれるというわけではなく、むしろその反対である場合が多い。

 本橋ナズナも、小学校時代にクラスの男子にもてていた女の子たちが苦手だった。彼女たちは特に美しかったわけではなく、十人並みの顔立ちなのに何故か男の子たちに好かれていた。もてる要素の一つにぶりっこな性格というのがある。彼女たちは皆、男の子の前ではかわいこぶりっこをしていたので、異性からの受けが非常に良かったのだ。だが、こういう女の子は大抵性格に裏表があり、本性は意地悪だったりずるかったりする。先生やクラスのボスに対しては一生懸命ごまをすっているが、弱い子やいじめられっ子に対しては偉そうな態度で接するものだ。

 男というのは小学生の時分から女の本性を見抜けない生き物なのだ。家では何もしないズボラ娘なのに、合コンの席でだけやたらに張りきって食べ物を取り分ける女なんかに弱い。結局のところ、もてる女とは計算高い演技派なのだろうかとナズナは思う。
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