花嫁指南学校

 何ものも人が恋に落ちるのを止めることはできない。たとえ外界との接触を極端に制限された施設、つまりカメリア女学園に在籍する女子学生であっても、その気持ちを抑えることはできない。

 幸恵は十九歳の時、週に一回学外の華道教室に通っていた。華道教室は学園の最寄り駅から電車で三十分の所にあり、彼女は通学の途中で一人の男子高校生に声を掛けられた。彼は十七歳の都立高校二年生で彼女より二つ年下だった。下校途中で見掛ける幸恵に恋をした少年は二ヶ月あまり悩んだ末、彼女に声を掛けて自分の気持ちを告白したのだ。幸恵も少年の熱い思いに打たれ、二人は相思相愛の仲になった。

 若く未熟な娘が恋に落ちるとどうなるかというと、言うまでもなく彼女の頭の中は恋愛一色に染まってしまう。幸恵は華道の稽古の帰りに少年と逢瀬を重ね、若い二人は将来を約束するようになった。十代のカップルによくあるパターンである。

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