花嫁指南学校

 短大の二年に進級する頃、幸恵は自分が妊娠していることに気づいた。強い吐き気に見舞われた彼女が市販の妊娠検査薬を購入して調べたところ、検査結果は陽性反応を示した。困りはてた彼女が学園の養護教諭に相談すると、養護教諭は彼女を産婦人科にかからせた。医師の診断によると彼女はその時すでに妊娠三ヶ月だった。幸恵の妊娠は学園の上層部の知るところとなり、彼女は問答無用で実家に帰されることになった。学園の目的が会員専用の花嫁候補の養成であるだけに、彼女のやったことは彼女を育てた学園に対する背信行為だった。

 幸恵には人工中絶をするという選択肢ははなかった。堕胎したところで学園が傷物となった学生を引き続き置いてくれるとは思えなかったし、彼女は愛する人の子どもを産みたかった。交際相手の少年は高校を出たら就職して、子どもと彼女を迎えにくると約束してくれた。幸恵は、玉の輿に乗るという選択肢ではなく、真実の愛に生きることを選んだ。彼女は潔く学校を退学し八年ぶりに家族の住む北陸の田舎町へ帰った。
< 99 / 145 >

この作品をシェア

pagetop