綴られた恋物語
もし彼女が風邪を引いたら

「お前はバカか⁉︎」

「…すいません」




ことの始まりは朝の教室で。
フツーに教室に行くと、
クラスメイト達に囲まれた彼女のあやめがいた。


「…何してんだ、お前ら」

「あ、彼氏登場ー!
あやめ、熱あるからよろしくー!」

「は⁉︎熱?」


よくみりゃ、マスクした顔はこれでもかってくらい赤くて。
おでこに手を当てると、ジュッ、って音がした。


「…ジュッ?お前今熱何度…」


ちょうどピピッと音がして体温計が現れた。


「38度、8分?あ、怜、おはよー」

「おはよー、じゃねぇ‼︎
お前いますぐかえ、」

「怜の手、冷たくて気持ちいい…」


いつの間にか俺の手はあやめの首筋に当てられてて、手を引いた本人は緩んだ表情を、さらに緩ませていた。


「気持ちいいんじゃなくて、お前が熱すぎんだよ」


休めばよかったのに。
というと、こいつは"怜に会いたかったから"と言った。

こういうことがあるからつい許してしまう。
それでも、
その赤く火照った顔とか
いつもより甘えてるところとか、
本当なら俺以外に見せたくないとか
俺のつまらない独占欲がふつふつと湧いてくるばかりで。



「絶対体育はでるなよ」

「うん。大丈夫、わかってる」


正直気が気じゃないが、
風邪が治ったら説教するとして、
今はクラスの飢えたヤロー共からこいつを守らないと。

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