チャット恋愛注意報!!(旧)
何も言えず、うつむく私。
ユージは相変わらず言葉を探しているようだ。
彼の顔を、私はまだマトモに見ることが出来ていない。
「ちょっと、メールしてみるね」
会話に困ったらしいユージが言い、携帯を開く。
その直後、『あ』と何かに気付いた。
だからユージの方を見、その視線の先を追うと……、
「あれってフジヤマじゃない?」
「……そうかも、です……」
……車の鍵をクルクル回しながら口笛を吹く男性が向こうから歩いてきた。
富士山と桜が印刷されているド派手なTシャツを身にまとい、麦わら帽子をかぶっているのにサングラスもかけているという、この場からかなり浮いてる男性。
一瞬で『フジヤマだ』と思った。
どこの怖いお兄さんですか……。 いや、でもリアルで怖い人だったりして……?
「ちょっと隠れよう」
「え? あっ、はいっ……」
隠れよう。と言ったユージが、私の手を握り締めた。
それにドキッとする間もなく、木の後ろに引っ張られる。
「フジヤマがあの人じゃないことを祈りたいけど、多分アレだろうなぁ……」
「で、ですよね……」
「無視して二人でどっか行こうか?」
「え? あの、でも……YUKIは……」
そう言いかけた時、派手男に近づく人が見えた。