チャット恋愛注意報!!(旧)
まるで忍者のように身軽で、あっという間に私の部屋の窓の前に来る。
カーテンの隙間から外を窺っていた私と、バッチリ目が合う。
「ここを開けてくれると嬉しいんですが」
その声にハッとして、慌てて窓を開ける。
真っ昼間に、道路側の屋根に男の姿……なんて、不審者以外の何者でもない。
通報でもされたら。と思い、思わずユージを中へと入れてしまった。
「な、なんで……どうして、私の家にっ……?」
「フジヤマから大体の家の場所を聞いた。 それで、『桜子っていう高校生の住んでる家ってどこですか』って聞きまくった。 ついでに言うと、本名もフジヤマの提供。
その結果、5軒向こうの菅原(スガワラ)さんからこの家のことを聞いた」
……菅原さんの家には、私より4つ下の女の子が居て……小学校の時は、その子の手を引いてよく一緒に学校に行っていた。
今も会えば挨拶をするし、時々立ち話もする。
……菅原のおばちゃん、個人情報をそう簡単に流出しないでください……。
「で、最近どうした?」
「……え?」
「チャットに来ないし、メールの返事もないし」
「あ、うん……ごめん……」
どこか怒ったような顔のユージ。
何も言わずにチャットから落ちて、その後音信不通になるなんて……当然、怒るよね……。
「YUKIもフジヤマも心配してる。でも二人は来れないから俺が来た」
「……うん……」
「……フジヤマの言葉、気にしてる?」
「……」
「……」
重たい無言が流れる。
フジヤマの言葉というのは、『好き』っていうアレのことだよね……。
「……あのね、サクラ。 フジヤマが『ごめん』って言ってたよ。
チャットにリアルの話を持ち込んじゃったこと、スゲー気にしてた。
俺のこととか、YUKIのこととか……『みんなの気持ちをもてあそぶようなことして悪かった』って言ってたよ」
とても優しい顔で笑い、私の頭を撫でるユージ。
その動作や言葉が胸にチクチクと痛みをもたらし、目には涙が溜まっていく。