Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩


「あ~…えっと、悠里。やっぱり社会人としていきなりお休みを取るのはどーかと思うし…」


ここは一つ須藤クンのご期待に応えて仕事に行った方が良いんじゃないかな?

そう言った私を暫く切なげに見詰めていた悠里は観念の溜息を一つ吐いて「仕事行ってきます」と力なく呟いたのだった。



悠里はお仕事だし、それなら私もお休みを撤回してお仕事に行こうかな…なんて思たりしたけどそこは悠里に阻止された。

『折角念願かなって美久を一人占め出来たんだから。例え一週間といえども僕だけの美久でいて!』って。

……悠里は本格的に人形として私を愛でる気でいるんだろうか。

些か呆気にとられたものの熱意に気押されて了承した。

『じゃ、なるべく早く帰るから』と言い置いて、須藤クンに強制連行される形で悠里は会社へ。

誰もいなくなった静かな部屋でクスリと笑う。

…知らなかったな。

悠里ってホントは凄い甘えたさんなんだ。

甘えん坊ってだけじゃなくて結構独占欲が強くて、駄々っ子だ。

ずっと悠里は、落ち付いていてしっかりしていて温厚で、私なんかよりずっと大人なんだと思ってたから。

だけど悠里が見せる我儘の全部が私に対する愛情に起因しているのは分かるから
ニヤニヤするのを抑えられないくらい、嬉しい。

二日間の行為で気怠い身体、肌の至る所に舞散る赤い痕。

その一つをそっと指でなぞってふふっと笑った。


「…寂しいから早く帰って来てね。」


どれだけ愛を注がれたって、離れてしまえば途端に寂しい。

たった二日間で私は悠里がいなきゃダメな身体に作りかえられた様…。



そんな幸せな悩みに苛む私は知る由もなかった。

まさか仕事を休んでいる間にあんなとんだ事件が起こっていたなんて―――




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