Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
☩ ☩ ☩
所は『NANATORI』
「…これはどういう事なの。」
忌々しげに吐き捨てるのは麗那。
心底腹立たしげなのはその声音を聞けば知れるが、そこには若干の不安も含まれているようだ。
週明けともなれば週末に比べて集客が減るのが当然の接客業。
その例に漏れず百貨店自体の人の流れは穏やかだが、事『NANATORI』だけは例外だった。
とはいえ少し離れた場所から意味ありげなニヤニヤ笑いで店内を探っているような歓迎すべきもない野郎共を客と呼ぶ気にはならないのだが。
周囲の視線を気にしながらリノが不安そうに言う。
「本当になんなんですかね…。さっきから美久さんの事ばかり訪ねられるんですけど。」
それは麗那も同じだ。
どうやら招かれざる客共の目的は『柏木美久』らしい。
ともかく怪我の功名とでも言うべきか、美久が休みで良かった。
芯の強い彼女の事だ、客の誹謗中傷如きに易々と潰れる筈はないだろうけども、こんな気分の悪い視線に美久が晒されるのかと思えば仲間であるコッチが耐えられない。
「麗那さん。ちょっと。」
リノが休憩に入っている間に麗那は川端に呼ばれてレジに向かった。
川端はフロアに入らずずっとレジに陣取ってPCを操作していたのだが……
「なんなのよ。これ。」
見せられたPC画面に麗那は驚愕の…あるいは憤怒の声を洩らした。