Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
須藤に突き飛ばされた拍子に彼女の手から落ちた鞄から中身が廊下に零れ落ちている。
総務の仕事で銀行へ行っていたらしく透明なポーチに入った会社名義の通帳と、免許証などの彼女の私物が少々と―――
「中々世の中も物騒なものですね…。」
スタンガンを手に取り言わずもがなを呟く。
クワバラクワバラ。
須藤の目に留っていたら今頃傷害事件で大騒ぎだよ。
そっと肩を竦めるに留めて僕は視線を彼女に向けた。
「どうしてこんな事をしたんです?」
須藤から解放されて放心状態だった彼女がその言葉に我に返り、途端に活気づいた。
「ぁのニセモノをは、排除するため、です!」
目をギラリと輝かせた彼女は戦慄く拳を握って捲し立てる。
「あ、のバカな女。私の単なる身代わりの、くせにっ…!だって柏木さんが愛しているのは私だもの。会わなくったって、ちゃんと分かってた。私の名前を口にして愛していると言ってるのも。ちょっとよそよそしい態度は、私が下らない女共に苛められないように気を使ってくれてたんだってのも。それでも柏木さんに愛されている私が妬ましくて苛めるヤツ等がいて、心配した柏木さんが私と同じ名前の女を身代わりに仕立てた事も―――」
「……………ぁぁ、そう言えば白井さんって下の名前はミクでしたっけ」
白井未来。
たかが気遣い程度の親切で人はこんなにも自分に都合の良い思い込みが出来るものなのか。
電波系っていうのかな。
明らかにイッちゃってるね……