Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
……1
階下に降り立った僕は這い転ぶようにして遠ざかる後ろ姿を須藤と二人で眺めた。
「あーあ。まんまと逃がしちゃいましたネ。」
その言葉にはっとした須藤は目を吊り上げた厳めしい顔をコチラに向ける。
「貴様…っ!得意先の令嬢になんて事をしやがる。やり過ぎだぞ!!」
「まさか。幾ら僕だって社会のルールは弁えてますよ。現に彼女は怪我一つ負ってないじゃないですか。ちゃんと須藤が現れたのを確認して、ちゃんと受けとめてくれると信じてやった事ですから。」
ニコリと微笑んでそう言えば、須藤は一瞬開いた口が塞がらない、と言った顔をした後、諦めたように溜息を吐いた。
「……所でオマエ、記憶は戻ったのか?さっき言っていたセリフは…」
“二度目は無いと言った筈です”
僕は緩く首を振った。
「これまでも時々はふわりと何かを思い出す事があるんですけどとても断片的で、いつ何時どんな状況で言ったセリフなのかはまるで思い出せません。」
今回のもそうだ。
しかし分からないながらもどうやら使い方は間違って無かったようで、とりあえず良しだろう。
「さぁ、そろそろ終業時間ですよね。早く帰り支度して帰らなくっちゃ。俄然帰るのが嬉しくなってきました。」
喜色も隠さずそう言った僕に、須藤は辟易と溜息を零した。