Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
誰かに名前を呼ばれて、同時に宙に彷徨っていた手が強い力で引かれた。
支え合うようにしてその場に崩れながら、誰かの腕の中で非難めいたクラクションの音を聞いた。
それが誰なのかなんて見なくても分かってしまう。
「………悠里……?」
誰かなんて見なくても分かるけど、
このナイスタイミングで登場するのがある意味奇跡のようで。
「間に合って、…よかっ……。心臓、止まるかと…思っ、た」
ゼイゼイと上がった呼吸は、きっと私が車道に投げ出されたのを見て必死に走ってくれたから。
ぎゅうっと抱きしめてくれる腕が震えているのは、きっと本気で心配してくれているから。
紡ぐ声が泣きそうなのは、死ぬほど不安にさせたから。
「助けてくれて有難う。心配かけてゴメンね?でも悠里が助けてくれたから私は大丈夫だよ?」
安心させるべくぎゅっと抱き返したけれど、私の身体に回された腕は離れるどころか更に強さを増す。
暫くして、大分落ち着いてきたのか肩に埋められていた顔がゆっくりと持ちあがった。
「……貴女って人は……。」
放心状態で震えていた久寿軒さんは悠里の視線にビクリと竦み上がった。
零れた声音に、言われた本人でもない私でさえ怯えた。
ど、どうしよう…っ!
悠里から出る気配がいつもとまるで違うっ。