Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
「でも…」
不服そうに呟いて悠里が顔を近づけてくる。
額を突き合わせる距離で見詰める瞳はゆらゆらと何かを静かに燃やすみたいに揺れている。
「僕から逃げ出したかったんじゃないんですか?」
「え?」
目を丸くする私とは対称に悠里は一層目を眇めた。
「全てを須藤から聞きました。」
ええっ!
須藤君言っちゃったの?
久寿軒さんと言わないって約束してたのに。
それは勿論、悠里が姉弟としての絆を恋愛と錯覚してるか否か、ってのを試すためで。
あ、でも私もルール破って言っちゃおうと思ってたしイイのか、な?
「あ。誤解しないでくださいネ。須藤が教えてくれたのは僕が姉さんに手を出したのを知った後です。須藤曰く、俺は何のルールも侵してない。って。」
ついでに賭けは俺の勝ちだと言ってバカ笑いしていたと聞かされたけども、バカ笑いする須藤君が今一想像できない。
「何故教えてくれなかったんですか、“義姉弟”だって。結婚までしようとした関係だったって。」
責めるような眼差しは虚勢を失うように長い睫毛と共に落ちた。
「言ってくれなかったのは僕が記憶を失ったのを良い機会に、僕から逃げ出すためじゃないんですか?……まぁ、逃げ出したくなる気持ちも分からなくは無いですけどね…。我が事ながら、柏木悠里って相当重いというか面倒臭い男ですもんね。」
えっ!
ええっ、私逃げたの大前提?
「に、逃げた訳じゃないよ!そうじゃなくて……そ、それに私、悠里の事ウザイとか思った事ナイよ!?」
そりゃちょっと過保護かな、とかは思ったりしたけど…。