Glass slipper☩シンデレラボーイは甘く永遠に腹黒に☩
「…私、その時彼氏なんていなかったですけど?誤解されるような心当たりも全く…」
「ああ。それについては大学に入ってから偶然、友人から聞いた。…俺は知らなかったんだよ。あの時柏木と歩いてたのが“弟”だったなんてさ。」
…………………へ?
悠里?
あまりに検討違いな名前を聞かされてぽかんとする。
そんな私に先輩は苦笑いを浮かべた。
「そんな顔してくれるなよ。コッチは知らなかったんだからさ。すっげーイイ男と付き合ってるって聞かされて挙句に二人で歩いてる所を目撃して…傍から見ても親密な空気だし、柏木は安心しきって幸せそうな顔してっし。」
それはだって……弟だから。
この期に及んで悠里に緊張感を抱くとか、不安を抱くとか、そんな要素は一つもないんだもの。
あ、でもその時も手を繋いでたとしたら、それは誤解を招く要素だ。
これからは気をつけなきゃね。
そんな事を改めながら、はふっと溜息を吐いた。
「…じゃあ、偶然に偶然が重なった擦れ違いだったんですね。」
お互い告白しようと思った矢先に相手に付き合ってる人がいると誤解して、諦めた。
これを縁がなかったと言いきるにはあまりにもザンネンな人生……―――
「いや。出来過ぎてる…んだよな。」
意味不明なセリフに顔を上げれば先輩はいつになく困ったような顔をしている。
「これまで何となくの推測でしかなかったんだけど、今日柏木の話し聞いて確信した。でも今更だし柏木に言うべきじゃねぇ気もするし…」
「な、なんですか?」
恐る恐る問えば、先輩は真面目な顔で私を見据えた。
「もし、今の彼氏と幸せになりたきゃ………弟には気を付けとけ。」