君想歌
新選組が以前は壬生浪士組と
呼ばれていた頃から和泉とは
共に過ごす大切な仲間。

少なくとも土方は
和泉の事をそう思っている。

だから和泉が女だとしても
関係が無い。



土方は面倒臭そうに
屯所の門を親指で指し告げる。

「総司が新しく出来た甘味屋に
着いてきて欲しいんだと。
毎日甘い物食って飽きねぇのか」

呆れたような表情を浮かべて
訊ねる土方を見つつ和泉は
立ち上がる。


「総司にとっては甘味は
生きる糧らしいよ。
私は飯と寝床があったらいい」


緩んだきゅっと着流しの帯を
締め直し和泉は傍らに置いた
大小の刀を腰に差す。


「遅くならねぇ内に帰って来い。
夜の巡察、出るんだろ?」

「はーい」

軽い返事を土方に返すと
振り返らずに髪を揺らし
歩きながら手を振った。


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