君想歌
町に入ると
並んで二人歩く。


「巡察以外何も仕事が
無いですし暇ですね」

はぁっと息をつきながら、
沖田は腰に差した愛刀
菊一文字に触れる。

「まぁ……。
平和だから良いとも
言える訳だし?」

苦笑して言う和泉だが
自分も言える立場じゃない。


泣く子も黙る新選組。

浅葱色の羽織を着て
町を歩けばあからさまに
避けられもする。

浪士と斬り合いとでもなれば
和泉でさえ刀を抜き
敵は斬り捨てる。

私も数え切れないくらい
人をこの手で殺めてきた。


隣を歩く沖田が立ち止まる。

「ここです」

話しているうちに
一軒の甘味屋に到着する。


店の入口にかかる赤色の暖簾を
嬉しそうな沖田に続いて
和泉もくぐった。


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