生まれたての放課後。
「…宏く、」
だけど表情がこわばったのはほんの一瞬で、わたしが何かマズいこと言ったかな、なんて思考する前に、すぐにいつもの宏くんにもどった。
でも、そのあと笑う顔はくずれそうに儚くて。
「そか、いつか聴きたいな茶倉のピアノ」
……うそだ、宏くん。
すぐに分かる。表情を見たらすぐだ。
……ピアノ、きっとやってたんだね。
前に言ってた、宏くんが忘れられない人。
元カノさんもピアノ、やってたんだね。
「…今度、聴いてもらいたいな」
「お、楽しみにしてる」
どうしてそんな顔をするのかな。
苦々しい表情。あの日と一緒だ。
何があったんだろう。
宏くんが寂しそうな顔をするのは、なんでなんだろう。
どうして苦しそうなんだろう。
……ああ、見てるだけで、よかったのに。
知りたいな、宏くんのこと。もっと。