生まれたての放課後。
あまりの寒さにコートのポケットに手を入れたとき、気づいてしまった。
帰路で気づいてしまったら、学校にまた取りに戻るしかない。
………まあいっか。いいよ。
そんなにまだ学校から離れてないし……いいよ。くるりとUターン。
ただちょっと、ちょっとすごく寒いだけで。
しょうがないよ、……うん、しょうがない…
へへ、と笑いながらうつむいたとき、横を自転車が通り抜けた。
シャッ、て。さむい。
自転車の風、さむい。
だけどその自転車は、うつむいたわたしの少し先で急ブレーキで止まって。
「茶倉っ」
そんな声がするものだからいきおいよく顔を上げると、いるんだもん。
「茶倉も学校もどんの?」
宏くんが、いるんだもん。
心がぽっと、あたたかくなった。
すごい、声だけであたたまった。
宏くんは、すごい。
「となり歩こ」
忘れ物バンザイ。