生まれたての放課後。
綺麗な子だ。
うん、たしかに、ピアノやってそう。
「あ、うん……たのしく、やってるよ」
「そっか」
ふたりの会話はぎこちなくて、人と接するのが上手な宏くんだから、すごく違和感。
いまどんな顔してるか、分からないけど。
「そういえば」
女の子が突然、宏くんの陰になっていたわたしを見た。
「宏の彼女?」
わたしの顔と宏くんの顔を交互に見ながら、首を傾げる。
…あ、となり、歩いてたから。
冷たい空気を吸い込んで、「ちがいます」を出そうとしたとき。
「そうだよ」
わたしを一瞬だけ見た宏くんが向き直って、そう言った。
寒そうな息と共に肯定の言葉を、口にした。
女の子はやさしく微笑んで、「そっか」と言った。