だから私は雨の日が好き。【夏の章】※加筆修正版
「・・・俺が今までどんな想いで。どんな想いで、耐えてきたと想ってる!!!」
「――――――ッッ!!」
湊が震えている。
叩き付けた左手に顔を寄せて、私の肩に顔を乗せて、震えている。
「大事にしたかったから、大切過ぎて何も出来なかったのにっ!!!俺の理性を吹き飛ばすようなこと、言わないでくれ・・・っ!」
今、なんて言ったの。
『大切過ぎて』って聞こえた。
『理性』って。
何より湊が、自分のことを『俺』って。
目の前にいる人が、突然知らない人に見えた。
それと同時に、なりふりを構っていられない、こんな余裕のない湊を、とてもいとしいと想った。
震える湊の背中に、そっと手を回す。
触れていいのかもわからずに。
少し怯えたように、この人に触る。
小刻みに震える背中は、とても温かい。
ぎゅっとしがみつく。
その瞬間、それよりもずっと強い力で抱き締められた。
息が苦しくて声が出ないほど。
力の加減も出来ない湊。
苦しそうな掠れた声が、私の耳元で囁かれる。
「欲しくてたまらないのは、俺のほうだ」
そう、言った。