モントリヒト城の吸血鬼② 〜望まれざる来訪者〜

「…。」



別に。



別に、これといって
決定的ななにかが、
あったわけではない。


ただ、最近の姉の態度は、
沙羅を不安にさせるのだ。



「…なにも…ないです…。」

なにかと聞かれれば
答えられない。


だけど、言いようのない
不安が、彼女に付きまとう。

「…。」

無言で沙羅の様子を
見守っていた朔夜が、
沙羅の頬をそっと撫でた。

そのまま、視線を外して、
沙羅の額に唇を押し当てる。

柔らかな感触を感じて、
何をされたのかと
考えるより先に、
朔夜は沙羅を
だきしめて言った。

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