はじめての恋



「どしたの?」



隣の席の湯川くんが聞いてきた。

痛みのおさまらない私はうまく笑顔を作れなかった。


「あ、ううん。ただ寝坊しちゃって…急いできたんだけどね」




倒れそう…




「顔色悪いけど」



「頭痛い」



熱でもあるのかな?
いつもよりも続く頭痛に喋るのもしんどくなる。


「保健室行けば?その方がいいって」



心配そうな顔をする湯川くん。



「うん…そだね。そうする」



とは言ったものの、遅刻したあげくきて早々保健室に行きたいって言いにくい…。



なんて、悩んでいると湯川くんが手を挙げた。


先生が湯川くんに気づく。


「なんだ?湯川」



「吉田さん、体調悪そうなんで保健室連れてっていーっすか?」



え…
言いにくそうしてたから代わりに…?



「わかった。無理しないように」



先生が私に声をかける。
私はまた頭をさげる。





そして、湯川くんに連れられ保健室に来た。
連れられ…というか、湯川くんの後をのこのことついて行くだけ。





保健室には先生もいなかった。

「今日、休み」


と、湯川くんが言う。


そうなんだ…
てか、どうして知ってるんだろう?





「そこ、使えば?座ってんのもしんどいんだろ?」



湯川くんが奥にあるベッドを指差す。


私は言われたとおりベッドに横になる。


湯川くんって、優しいんだ。



昨日ぶつかったとき、一瞬なにこの人って思ったけど。




なぜか保健室から出ようとしない湯川くん。


しかも、携帯を出し椅子に座り出す。



「湯川くん、ホームルーム出ないの?」



ホームルームも出席とられると思うんだけど。



「…めんどくせーし」



もしかして、ホームルーム出たくないから保健室ついてきたの?



「ずる賢い」



思ったことを口に出してしまった。



「賢い、だろ?」



と、笑って言う湯川くん。


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