捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 



一般的には自然な流れなんだと思う。

……でも……!

私はまるで人が変わったかのようにぐいぐいと迫ってくる惣介さんの胸に手を当てて、押し返す。

でも、さらに惣介さんは私に向かって迫ってきて、顔と顔の距離はすごく近い。


「……ま、待ってくださ」

「ダメです。もう待てません」

「や、でも……っ」

「さっき言ったでしょう?もう今日は琴音さんの言葉は聞かないって決めたんです」

「……っ、でも、やっぱり……ひぁっ!?」


私と惣介さんの身体が揺れ、ベッドのスプリングがギシッギシッと音を立てる。

想いが通じ合ってからは何度も惣介さんの部屋に訪れていたけど、寝室に足を踏み入れたのははじめてで。

黒と白で決められたシックなリビングとは違い、寝室はブラウン系の暖かみのある色で染められている。

……でも色を感じることができたのは一瞬のことで、すぐに薄暗くされてしまって、今は惣介さんを感じることしかできない。

寝室にいるというだけでもドキドキがすごいのに、“これから起こるかもしれないコト”を考えると……叫び出しそうだ。

今の今までベッドの上に二人座っていたのに、今は私はベッドの上に仰向けになっていて、その上には惣介さんがいる。

私の目にはもう、惣介さんの姿しか見えない。

服を着ているとは言え、この体勢はすごく恥ずかしいというか、気まずいというか……

つまり、そういうことで……

 
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