捨てる恋愛あれば、拾う恋愛あり。
 

車を15分ほど走らせた後、ある駐車場に到着した。

周りの景色はさっきと同じで、緑がたくさんだ。

かちゃっとシートベルトを外した惣介さんが、ぽつりと呟くように言う。


「……さ、勝負です」


うん、と惣介さんが気合いをいれるように頷く。

勝負って何だろう?


「……ここって、戦うところなんですか?」

「え?あ、違いますよ!そんな物騒なところじゃありませんから!さっ、行きましょう」

「あ、はい……」


何か惣介さんの様子が変だ。

一体ここはどこなんだろう?




「……。」

「……。」


私は目の前にそびえ立つものを見上げる。


「……やっぱり、ダメ、でしたかね?俺は結構興味深くて好きな場所なんですけど」

「……。」

「琴音さ」

「スゴいです」

「え?」

「こんなの見たの、初めてです!」


惣介さんに連れられてきたのは、鍾乳洞。

目の前には薄暗い照明の中に真っ白な柱が立っていて、それに沿って透明な水がポタポタと流れている。

 
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